日々の泡を綴る うたかたの光を撮る


by bbking1031
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蛇と花

ぼくをかわいがってくれた叔母がふたりいる。
父の妹と母の妹である。
母の妹は天草の山の中でひとりで暮らしている。
叔母の家にたどり着いたときは、ちょうど一人息子のケンちゃんが東京へ帰ったところだった。
ケンちゃんはぼくより10歳年下である。
東京に着いたという電話と、ぼくが訪れた時間が同じだった。
彼にも会いたかったが、帰ったら東京で会おうと約束をした。

叔母の魚の煮付けはとてもおいしい。
これが楽しみである。
その日はカワハギを煮てくれた。
ほかにお刺身や蛸の煮物。
350ccのビールを半分ずつ飲んでぼくは酩酊してしまう。
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叔母は神主でもあるので、朝早くお宮の掃除にでかけたようだった。
ぼくは朝の散歩にでかけた。
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庭の井戸端にまっ黒いホースのようなものがだらりと横たわっていた。
蛇だ。
首の下のあたりだけが白い。
「家の守り神だよ。」
と叔母がいった。
一昨年の夏、ケンちゃんとこの家の二階の部屋に蚊帳を吊って寝た。
なかなか寝付けなかった。
ケンちゃんはすでに鼾をかいていた。
天井を這う音がした。
蛇だ。
気味が悪くてなおさら寝られない。
そのうち、ドサッと蚊帳の上に落ちてきた。
これはあのときの蛇に違いない。
もう30年以上前のことだが、ケンちゃんとこの家の近くの山に登った。
川をじゃぶじゃぶを渡ってしばらく歩いたのだが、道が夏草に覆われていて進めない。
「帰ろう。」
といって、振り向くと、道端に蛇がいた。
あれもまっ黒なやつだった。
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朝ご飯を食べたら、叔母はお墓参りにいくという。
「ぼくもいくよ。」
数日前から左の膝が痛いのである。
墓へいく山道の入り口に手ごろな竹竿があって、
「これを杖にしたらよかよ。」
と叔母が手渡してくれた。
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墓参りというより、これは山登りである。
それでも10分くらいで墓についた。
途中で会った人はふたりだけ。
叔母はその人たちと世間話をする。
だれも墓参りにこなくなったから大変だという話。
みんな歳をとってしまって、この山の上の墓所には登ってこられないのだ。
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墓参りを済ませて、
「帰りは涼しい道を帰りましょう。」
ということになった。
竹薮の脇道をゆっくり降りて帰る。
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この辺りの山はかつては一面の蜜柑畑だったそうだが、後継者がいなって蜜柑の木を切ってしまったのだそうだ。
その蜜柑の木を切って草原になったところ一面に花が咲いていた。
不思議な光景に思わず声をあげてしまった。
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by bbking1031 | 2008-08-22 00:47 | 写真と日記